アレルギー疾患とは、本来、人間の体に備わっている細菌やウイルス、寄生虫などから体を守る「免疫」という仕組みが、何らかの理由で異常をきたし、過剰に働いてしまうなどして発症するものです。通常は害がないとされる花粉やホコリ、食物、金属などに対して免疫システムが反応し、くしゃみや咳、鼻水、発疹等の皮膚トラブルを引き起こします。さらにアナフィラキシーショックという状態になると、呼吸困難などを引き起こしてしまう場合もあります。
当院では、花粉症や蕁麻疹など、アレルギー症状の診療を行っています。アレルギーが疑われる症状がある場合には、各種アレルギー検査も行っています。またアレルギーを引き起こす、花粉やハウスダストなどの原因物質(アレルゲン)をなるべく遠ざけるようにするための生活指導(お掃除の仕方など)、スキンケア指導(入浴方法や皮膚の保湿についてなど)、また食物アレルギーに対して、アレルゲンとなる食物を遠ざけつつ、栄養が片寄らないよう配慮する食事指導など、患者さんそれぞれに合わせた丁寧な診療を行っていますので、お気軽にご相談ください。
花粉症
花粉症とは、花粉がアレルギー症状を引き起こすアレルゲンとなる、季節性のアレルギー性鼻炎のことです。原因となる花粉は様々で、飛散する季節もそれぞれ異なっています。たとえばスギやヒノキの花粉は2月下旬~4月中旬、シラカンバやイネ科では4月下旬~6月中旬、ブタクサは8月下旬~9月下旬などとなっており、患者さんご自身がどの花粉に反応するか、アレルギーテストで調べておくと良いでしょう。その季節になったら、マスクやゴーグルを使用し、また服に花粉を付けたまま室内に持ち込まないようにするなど、花粉をなるべく遠ざけることが大切です。
花粉症(季節性アレルギー性鼻炎)は、鼻づまり等によって、夜はよく眠れないといった睡眠障害を招き、昼間の眠気や倦怠感などによって仕事や学業に支障をきたすこともあります。また顔などの皮膚に発疹などの症状を起こす場合もありますので、早めに治療することをお勧めします。治療法としては抗ヒスタミン薬や抗ロイコトリエン薬を使用します。鼻の粘膜の炎症が強い場合は、鼻噴霧用ステロイド剤を使用する場合もあります。
蕁麻疹
蕁麻疹(じんましん)は、皮膚に円形や楕円形のはっきりとした赤い盛り上がりが、突然現れるのが特徴です。大きさは2〜3mmのものから数十cmくらいまで様々で、これらがつながることもあります。多くの場合、直接的な原因は特定できていませんが、皮膚のマスト細胞(肥満細胞)と呼ばれる細胞が、皮膚内にヒスタミン等の化学物質を放出することで引き起こされると考えられています。ヒスタミンはかゆみの神経を刺激します。蕁麻疹がかゆみを伴うのはそのためです。
通常は数時間~24時間で消えるのが特徴で、この症状が現れたり、消えたりを繰り返すようになります。これが1〜2週間程度(最大6週間以内)で治まってしまうものを、急性蕁麻疹と呼び、6週間以上のもの(長いもので数ヶ月から数年に及ぶ例もあります)を慢性蕁麻疹と呼びます。
蕁麻疹の原因としてはいろいろと考えられていますが、そのひとつにアレルギー性蕁麻疹があります。アレルギー性蕁麻疹は、食物や薬品、植物などに含まれる物質が、アレルギーを引き起こす原因物質(アレルゲン)となって、それに触れたり、それを食べたりしてから数分~数時間後に発症します。
蕁麻疹の治療としては、かゆみの症状が強い場合は、抗ヒスタミン内服薬を使用し、かゆみを抑え、症状が現れなくなることを目指します。重症例ではステロイド剤を用いる場合もあります。その上で、原因となるアレルゲンを回避するようにします。蕁麻疹の症状は、アナフラキシーショックという重篤なアレルギー反応として現れることもありますので、急激に、強い症状が現れた場合は、お早めにご受診ください。
食物アレルギー
食物アレルギーは、特定の食べ物がアレルゲンとなって発症し、蕁麻疹やかゆみなどの皮膚症状、さらに咳やヒューヒューという喘鳴などの呼吸器症状がみられます。このほか、消化器症状として腹痛、嘔吐、下痢などが現れたり、瞼や唇などの粘膜が腫れたりすることがあります。さらに内側の気道の粘膜が腫れると窒息という危険性もあります。
同疾患は消化管や免疫機能がまだ未成熟な乳幼児や学童で発症することが多いのですが、成人期でも発症します。原因となりやすい食べ物として、乳児期は鶏卵や乳製品、小麦などが、また学童・成人期は甲殻類、魚介類、そば、小麦、果物、ピーナッツなどがあります。子供のころに食物アレルギーがあった場合、大人になるにつれて耐性を獲得し、アレルギーが出にくくなると考えられていますが、食べ物によっては耐性を獲得しにくいものもあります。
食物アレルギーの治療では、蕁麻疹など皮膚に現れた症状に対しては。塗り薬や内服薬によって改善していきます。一方、注意しなければならないのが重篤になった場合のアナフィラキシーショックで、全身のショック症状や、血圧低下、呼吸困難、意識消失等をきたし、命にかかわる場合があります。速やかなアドレナリン筋肉注射や、ステロイドの静脈注射が必要です。
こうした事態を引き起こさないためにも、自分がどんな食物に反応するかを調べておくことが重要です。血液検査やパッチテストなどで、まず原因となる食物を特定し、その食物が判明しましたら、栄養が片寄らないよう注意しながら、なるべくその食物を遠ざけるようにすることが大切です。